このステージでの治療のゴールは、基本治療で作った治療用冠を最終の耐久性の高い補綴物に置き換えて、顎関節と咬合の関係をなるべく永く良好に保っていくことです。
まずは、基本治療を含む最初の治療ステージの再確認をして再評価検査をするところから始めます。予防習慣のチェックから、一つひとつの歯と歯周組織の状況、顎関節と咬合等の資料を作成し、視覚的に再評価していきます。
基本治療では、顎関節が安定するように、治療用冠を使った咬合調整をおこないましたが、このときに制作した治療用冠は樹脂製で柔らかい素材できているため、賞味期限は約半年しかありません。もしこれを使い続けていくとすると、樹脂が磨り減ってきてせっかく調整した咬合状態が変わってきてしまいます。
そこで、このステージでは治療用冠を金属や陶材で造られた補綴物(人工物)に変換し、長期の安定化がはかれるようにしていきます。
では、実際の製作工程をご紹介しましょう。
まずは、歯科医が形成した患者さんの現状の歯型を寸分たがわず採取します。型が取れたら、そこに石膏(超硬石膏)を流し込んで患者さんの歯の模型を作ります。
この模型を、咬合器にセットして、歯科技工士が咬合器上で咬合を見ながら補綴物を作っていきます。 ただ、残念なことに、咬合器上で作られた補綴物は正しく機能しません。
なぜなら、型を取って模型を作ってという作業にはどうしても間接工程が入るため、微妙な誤差をなくすことはできません。また、石膏の模型には弾力がありませんので、実際の歯のように振る舞ってはくれません。さらに、咬合器という器具は、顎関節の動きを再現できるほど精巧には作られてはいません。模型をセットしてカパカパと動かしてみることはできるものの、患者さんの歯列の位置関係を余すことなく全て正確に再現するという機能は備えていないのです。
これだけの条件がそろってしまうと、実際に咬合器上で作った補綴物をそのまま形成した歯に装着してみても、うまく機能させることは当然できません。
では、形成した歯に補綴物をぴったりと装着させるにはどうしたら良いのか。答えはとても意外なものかもれません。
患者さんのお口の中で、歯科医が直接調整作業をおこないます
形成した齒に技工士が作った補綴物を被せて、患者さんに実際に噛んでもらいながら、歯科医の手で最終調整をおこないます。
ピタリと適合する補綴物を作るためには、その患者さんの顎関節の状況を理解した歯科医が、お口の中で直接調整をするということがとても大切なのです。
隣同士の歯の関係、歯周組織との関係、そして患者さんの持つ固有の顎関節の動きに直接合わせながら、決まった手順で一つ一つ丁寧に調整することで、ピタリと適合する補綴物を作っていきます。補綴物はこの最終調整の工程を経ることによって初めて、自分の体の一部として機能するのです。
患者さんのお口にピタリと適合する補綴物を作るために、当院がこだわっているポイントをご紹介しましょう
治療用冠を削って形を整える時に使用するのは、5倍速コントラ(※)という器具です。この器具を使って、歯の勾配や強度を伴った厚みを意識しながら削合したり、綺麗な歯型をとるために歯の面を滑らかに加工したりしながら形成をおこないます。
この一連の工程はとても高い精度が求められるため「マイクロスコープ」を使用しています。
※5倍速コントラ:トルクが強く、ブレナイので、思い通りの歯冠形成をおこなうことができるのが特長です。
歯科技工士が作る補綴物の精度は、模型の正確さに大きく左右されます。そのため、当院では模型の型取りの際に「100%寒天」を使っています。寸法精度の正確さはこの100%寒天による歯型が一番すぐれているからです。
まずは、隣の歯との接触関係を調整します。次に、形成された歯と補綴物を正確にフィットさせるために、内面のチェック・調整や両者の「すり合わせ」をおこないます。最後に、顎関節の適切な位置で、上下の噛み合わせがきちんと「点」で接触するように咬合を調整します。
ここが当院の最大のこだわりであり、補綴物に命を吹き込む工程だと考えています。 時間と根気の必要とされる治療ですが、患者さんが満足して噛んでいただける姿を見ることがわたしたちの喜びでもあります。
噛み合わせを調整するとき、上下の歯の接触の強さの度合いや接触する位置をみるために、咬合紙といわれるカーボン紙を使って色を付けていきます。
この咬合紙は200μ(ミクロン)、100μ、50μ、37μ等々といろいろな厚みの物がありますが、調整段階や補綴物の種類によっても使い分けていきます。
ただ、咬合紙自体に200μから37μの厚みがあるため、噛み合わせてもらっても咬合紙の色はついているのに、実際は上下の歯が合わさっていないという現象が起こる可能性があります。
その弊害をなくすために、当院では咬合調整時に、オクルーザルストリップス(厚さ12μ)という極薄のシートを使用します。このシートを噛んでもらい、そのままの状態でシートを引っ張る「引き抜き検査法」にて、しっかりと噛んでいるかどうかを必ず途中でチェック入れながら調整を進めていきます。
治療計画にもとづいた初期治療が全て完了したら、最初の口腔ドックの検査内容とほぼ同じ内容で、PCP検査という検査を実施します。
口腔ドックは他の歯医者さんでおこなわれた治療を検証することになりますが、PCP検査はわたしたち自身がおこなった治療の検証です。
検査の結果は、これから先におこなわれる定期検診のための大切な基礎資料にもなりますし、患者さんの今後を見ていく上での基準値にもなります。
検査の内容は以下のとおりです。
治療後の状況を提示するための検査(Post Case Presentation検査)
1CT撮影|2パントモ撮影 |3各歯のデンタルレントゲン撮影 |418枚法口腔内写真|5顔写真撮影|6口腔模型採得|7Cポジションでの咬合採得|8フェイスボウ採得|9歯肉溝検査|10プラークコントロール状況評価|11咬合診査
いよいよPost Case Presentation!
PCP検査の結果と、これまでに撮りためた写真をスライドに整理して、専用の部屋でプレゼンテーションをおこないます。治療の前にお渡しした「口腔ドック報告書」を元にして、治療の内容とその成果を一つ一つ確認しながら、治療開始時から初期治療終了時までを患者さんとともに振り返ります。
この時間はお互いホッとする時間です。振り返ってみると、とても懐かしい気がしますし、お口の中が段々と「健口」に変化していく様子が分かり、長期にわたる患者さんの努力と感動も伝わってきます。長い治療時間、経済的投資をされ、やっと「健口」を獲得された患者さん。その表情はとても素晴らしいものです。
患者さんとスタッフが治療の最終目標を共有していれば、たとえ道のりが長くても、互いに協力し合い、休むことなく、迷うことなく、誰もが最後まで到達することができるのだと考えています。
プレゼンテーションの最後には、この状態を少しでも長く維持していくために、定期検診による管理が大切ですということをお伝えします。
顎関節の状態がStageⅢa以前の方にはメンテナンス型定期検診、StageⅣa以降の方には咬合管理型定期検診がそれぞれ必要なことをお伝えし、患者さんのご理解のもとで、定期検診のステージへ移行していきます。
なお、当院で治療を終えられて定期検診の段階に入った方は、当院の「あい歯会」にご入会いただくことができます。
すべてを裸眼で確認していた頃の歯科治療は、“暗い・狭い・小さい”の三拍子がそろった処置がほとんどで、その多くを感覚に頼っていました。マイクロスコープはそんな歯科治療に“光と拡大”を与えてくれました。今まで見えなかったものを、自分の目で直視しながら治療ができるため、「よくできたつもりの治療」が「99.9%完璧な治療」へと変化しました。
当院では、診療室にカールツァイス社製のマイクロスコープを設置して、100%すべての治療で使用しています。 精密な作業が必要な
治療の際には、より高性能な【OPMI MOVENA】という機種の設置してある診療室を使います。スムーズなピントで狭い口腔内にすばやく焦点を合わせ、可動範囲が多いためあらゆる部位を直視できる最高の顕微鏡です。
メンテナンスの時は 【OPMI PICO】という機種が設置してある治療室で注視するべき部位をじっくりと確認します。