根管治療
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根管治療のラバーダム防湿
で必須のアイテム
クランプコレクション

クランプの種類が豊富にあることが重要です

歯科衛生士・田中 洋子 / たなか ようこ

ラバーダム防湿は根管治療を成功させる鍵となりますが、それには、あらゆる歯の大きさに適応する「クランプ(歯を支える金具)の種類が十分にそなわっていること」も大切なことなのです。

ラバーダム防湿はなぜ必要?

医科での手術シーンをイメージしてみて下さい。身体はグリーンの滅菌シートが被せられて、患部だけしか見えていませんよね歯の中を治療する歯科も外科と同じなのです。身体の中を手術する時と同じく、歯を治療するときはその部分だけを露出させる必要があるのです。

ラバーダム防湿の様子
ラバーダム防湿の様子

なぜならば、口腔内には500種類ぐらいの細菌が5000億から1兆個くらい生息すると言われており、感染防止対策が欠かせないからです。

これらの細菌感染防止対策を怠ると、誤嚥性(ごえんせい)肺炎の危険性や病巣感染の危険性が増してきます。

それゆえ、歯の中(歯髄)を治療する根管治療にはラバーダム防湿をし、歯の中に唾液、浸出液、血液等の水分が入らない環境をしっかりと整え、細菌感染を防ぐことが大切になるのです。

また、またラバーダムはこのほかにも根管洗浄で使用する消毒液や根管拡大に使用する薬剤等が口腔内に漏れるのを予防したり、器具の口腔内落下を防ぐ役目もあります。根管充填では根管内をしっかり乾燥させることが重要となりますので、唾液を遮断できるラバーダム防湿は必須となります。これらのことからラバーダム防湿をすることで根管治療成功率を90%にまで引き上げることができるとまで言われているのです。

根管治療におけるクランプコレクションの必要性

天然歯の大きさは前歯と奥歯では当然違いますが、男性、女性でも違い大きさはさまざまであります。そして根管治療が必要になるきっかけの大部分の原因はむし歯です。ということは、根管治療をする歯はむし歯に感染したエナメル質や象牙質は部分は削り取られてすでに無くなっている状態ということです。

また、一度根管治療を受けた歯には、金属の冠等が被されていることが多く、根管治療をおこなう際にその金属を外して治療をおこなうので、歯質がどの程度残っているかは金属を外してみないとわかりません。要するに、根管治療をおこなう歯は健康時の歯と比べて歯の量が少なくなっていることが多いので、その歯その歯の状況によってサイズが全く違うものなのです。

ラバーダムセットの例。クランプの種類が豊富でないと、歯にフィットさせることができない。
ラバーダムセットの例。クランプの種類が豊富でないと、歯にフィットさせることができない。

しかし、どんな状態の歯でもラバーダム防湿をおこなうには、ゴムのシートと歯を止める「クランプ」の大きさ、形の種類が豊富でないと対応できません。

歯質があった部分を再構築してクランプがかけられるようにしていく様子
左から治療前 >治療後 > 壁を作った状態

また、歯肉縁上(歯茎より上)の歯質が少ない場合はクランプがかけられるように充填材で歯質があった部分を再構築し壁を作りクランプがかけられるように歯の形を作ります。そしてやっとクランプがかかる状態にするのです。

どんな状態の歯にもラバーダム防湿をするには種類豊富な「クランプコレクション」が必須アイテムとなるのです。

どこの歯科医院にも準備されているの?

残念ながらされていません・・。歯科衛生士歴25年になる私ですがこれまで多くの歯科医院を見てきました。しかし、ラバーダムセットが存在する医院は当院だけでした。

なぜならば、ラバーダム防湿には保険点数がないからです。使用するに当たり手間暇時間を有する、またコストもかかるラバーダム防湿を保険治療の中で行うことは、歯科医院にとっては赤字となるのです。本来、きちんとした根管治療をするには必要なものですが・・。

厳密には「保険点数がない」のではなく、「過去には保険点数にあったがなくなってしまった」のです。なぜなくなってしまったのか?それは、根管治療の点数をひとまとめにしてその中に含んでしまったからです。

ラバーダムをしようがしまいが根管治療を行えば自動的に含まれるということ、つまりラバーダム防湿を行うか行わないかは歯科医の判断に任せるということです。しかし点数のないことを積極的におこなう歯科医はいるのでしょうか?

結果として、自由診療となる可能性は高いですが、根管治療のプロフェッショナル歯内療法専門医(参考:根管治療を任せるなら歯内療法専門医。名医の選び方を知ろう!)の先生は使用されていることでしょう。しかし、クランプの種類が整いラバーダム防湿へこだわりをもっているか?は問い合わせしてみないとわかりません。

ちなみに、一見痛そうに見えるラバーダム防湿ですが、麻酔下で行うことがほとんどですので痛みの心配はないと思います。

まとめ

口腔内の環境はけっして良いものではありません。口腔細菌、唾液、血液、狭い、暗い・・。そのような環境化で歯の中の治療をする根管治療にはまず環境を整えることが重要となります。精密機器が整っていることは当然ですが、集中して治療をおこなう歯科医にとっては術野の獲得も大切なことであります。

根管治療において術野の獲得をするためのラバーダム防湿。このラバーダム防湿をどのような歯にも対応させるためには、ゴムのシートと歯を止める「クランプ」の種類が豊富にそろっていなければ選択肢が生まれません。

つまり、ただラバーダム防湿セットが医院に備えられていればいいものではなく、あなたの歯を守るために、その中で鍵となるクランプの種類までも豊富に揃えて万全な体制を整えている医院は信頼がおけるのではないでしょうか?

ついでに、こだわりのある歯科医はラバーダム防湿をむし歯治療に使用していることもお伝えしておきます。

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