保険診療をやめた理由

PRIVATE PRACTICE
about us

保険診療の対象は、1本単位の歯の治療。
当院の診療は、お口全体が対象です。

日本には約10万人の歯医者さんがいます。そのうち、99%は保険治療を主としています。現行の歯科保険制度では、保険でまかないきれない差額分の費用を患者さんに請求してよいという差額請求制度があるため、保険医でありながら、保険がきかない材料や治療法を紹介したり、すすめたりする歯医者さんに出くわすことも少なくありません。


「自費治療は材料が違うから体にいい。」
「審美的に美しい。」
「保険治療にはない治療法だ。」
たしかに、自費治療にはこのような側面もありますが、当院の場合は保険診療に対して少し違った見方をしています。

そもそも、現在の保険制度は昭和36年にできたものですが、21世紀の現在でも当初のコンセプトと基本的には変わらずに、「1本ずつの歯」を対象にしています。歯が欠けてしまったらその部分を人工物でうめましょう、歯がダメになったら抜いて入れ歯にしましょうといったような治療です。 それに対して、当院のコンセプトは、歯の寿命をのばすために「顎関節を含めたお口全体の環境」を対象として、生涯ご自分の歯で食事をしていただきたいという思いで診療をしています。 わたしたちが自費治療を選ぶのは、1本の歯だけを診ていては患者さんの健康を守ることはできないと考えているからです。

顎関節の診断と
歯科保険制度

日本の多くの歯医者さんは歯科保険を主とした診療をおこなっているため、保険点数が付かないような診療にはほとんど興味を持っていないようです。その最たる例が顎関節ではないでしょうか。

顎関節を診断するのは
歯科医の役目です。

ご存知でしたか?顎関節は、身体の関節をあつかっているはずの整形外科の分野から外れている関節なのです。では、顎関節に症状が出たときに何科のお医者さんが引き受けるのでしょうか。

「それは、歯科医です」と答えるのが最も自然です。顎関節は下顎の一部で、下顎には歯も歯槽骨もついています。顎関節がガタつくことなく正常に機能して下顎が動けば、下の歯は上の歯に正確に当たることができます。
顎関節がブレている状態だと、歯の当たりもブレてしまい上下の歯が再現性のある正しい位置で噛み合うことができません。 こう考えると、歯を診る前に顎関節の状態をしっかりと把握することは当然のことのように思えます。

現在の大学の歯学部の講義でも、未だ顎関節はメインのテーマにはなっていないようです。患者さんから見れば摩訶不思議な現象でしょう。 顎関節と歯との関係は歯科保険の点数にほとんど載っていないので、多くの歯医者さんが関心を向けづらく、自分のテリトリーであるという自覚すらもなかなか持てないのでしょう。顎関節だけでなく、咬合治療や咬合の管理、補綴物の管理も保険の点数はスズメの涙程度というのが現状です。

歯科保険制度の欠点

日本の保険制度は世界に誇れる素晴らしい制度です。医科の方では最新の医療技術も巧みに制度に取り入れてそれなりに充実した制度です。医科と歯科では同じ保険制度という名のもとにありますが、医科は「人命を守ること」を対象に、歯科は「歯の痛みを治めること」を対象にしているように見え、中身はかなりかけ離れているように思われます。

実際に現在の歯科保険制度で「歯の命」を守ることはできるのでしょうか。たしかに日本中どこにいても、歯が痛いと思ったらすぐに応急処置をしてくれるという点では評価される制度でしょう。しかし、わたしたちは現在の制度では、歯を長期にわたって良好な状態で維持していくことは難しいのではないかと考えています。それには2つの理由があります。

歯科は予防が最優先されるべき。現在の保険制度は現物給付出来高払い制。

まず、第一に「予防治療が歯科保険の対象外」であること。予防プログラムのページでもお話ししましたが、歯の健康にとって一番の治療は、正しい予防法を日常の習慣にすることです。しかし、保険の仕組みの中には、予防についての記述が全く見あたりません。 医科では「禁煙治療」、「メタボ治療」があります。
予防プログラムを復習する

第二に「保険治療は現物給付の出来高払い制」だからです。歯科医というのは、ある面から見ると緻密な工芸品を作る「匠」に通ずるものがあると思います。なぜならば、患者さんの口腔環境全体にピタリと適合させる人工物を造型するためには、高度な技術と十分な時間が必要で、これをおこなう歯科医は匠のようなこだわりを持たなくてはならないと思えるからです。

しかし、今の保険制度は「出来高払い制」で、あらかじめ点数がきめられていて、どんな歯医者が治療しても費用は均一であり、結果の良し悪しを問われることもありません。 これでは、お口全体の調和や職人的なこだわりを追求していく治療はとても困難です。

一方で「医科」では、診療行為が命に直結することが多く、最新の医療技術がどんどん保険に取り入れられているため、歯科と比べると保険点数もそれなりにリーズナブルです。そして、医者の技術もさることながら最終的に、身体の回復はその人がもっている治癒能力に左右されます。

歯は命を支える臓器です。

では、歯がなくなっても本当に命に直結しないと言い切れるでしょうか。「歯を守るために顎関節を診る」のページでもお話ししたように、歯を含む「口腔」は食べ物の様々な情報を発信します。その情報を受け取った脳が「美味しい」と感じると、体に消化吸収の命令が伝達されます。 裏を返せば、正常に機能する口腔環境を持っていないと、必要な栄養素を確実に体に取り入れることができないということです。

歯を失ってしまったとしても、すぐに命を落としてしまうということはたしかにありません。一般的には、食べ物を飲み込みやすくするためについている「道具」のような感覚で、他の臓器ほど大事にとらえていらっしゃる方はそれほど多くないと思います。
しかし、本当は、体が栄養を受け取るために脳に情報を送る大切な臓器ですので、体の健康にはとても大きな役割を果たしています。

また、咬み合わせが安定し、きちんと正常に機能する歯を持っているということは、毎日の生活全般に関わることであり、心の健康をはぐくむことにも繋がっています。 歯の健康は、心身ともに健康で快適な暮らしを支えており、わたしたちの命を維持していくためにもとても大切な役割を担っていると言えるのではないでしょうか。
歯が大切な理由についてもっと詳しく

まとめ

保険制度の代わりは当院の診療システム

このように、今の歯科保険制度では、残念ながら歯を永く健全な状態で維持していくことは困難です。本来なら、保険によって十分な顎関節の診断とそれに呼応する咬合治療、歯を失わないための予防治療や定期検診、適合度の評価が認められ、歯を永く守っていくためのエビデンスに基づく歯科医療システムが確立されることが理想です。

当院はこのような理由から、患者さんの歯の健康は、現行の歯科保険制度では守れないと判断して保険医を辞退しました。歯科保険制度にとらわれずに真に歯を守っていく診療システムを提供させていただくことで、患者さんの健康をサポートしたいと思っています。

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しかの恩返し