それは第一に「全体の歯が接触している」ことが要件で、ただ単に接触しているだけではなく、上下同名歯が咬頭と窩を介して‘面接触’ではなく“点接触”していることが重要です。
第二は「前歯と奥歯の関係」で、前歯が奥歯の横方向に架る力を引き受けて背負ってあげ、奥歯は縦方向の力だけを確りと受け止める構造になっている事が必要です。
そもそも歯は横揺れの力に対しては弱い構造になっているため、顎関節により近い奥歯が横揺れの力を受けると、テコの原理で前歯よりもより多くの荷重を受け、時間の経過と伴にグラグラになるか顎の関節がカクカク鳴るようになっていきますので、この‘横揺れの力’を関節に遠い前歯が完全に引き受けることにより、奥歯が楽になり奥歯を長く有効に持たせることができるわけです。
そして、第三に“歯”と“顎関節”との調和がとれているか。
私たちはともかく食べなければなりませんが、その際に一番噛み易いところで食べ物を噛もうとします。左側では噛みにくかったり、痛む箇所があれば右側で噛むという行為を繰り返すうちに、全ての食事を右側だけで処理してしまう癖がつきます。
ここで注意しなければいけないことは歯を移動させて噛むということは顎も一緒に移動するということなのです。
耳の穴の1p位前には顎の関節があり、そこにすっぽりと収まっているのですが、虫歯や歯を失うことによる歯の移動、歯科医による人工物の処置などのため顎の位置をずらさなければうまく噛めなくなってしまった場合、当然この関節にきちっと収まっていた関節も移動を余儀なくされてしまいます。
関節の位置が動けば関節に付随していた“筋肉”や“関節円板集合体”が異常な緊張を強いられ、痙攣や過緊張を引き起こしてきますので、それらを無視してそれでもなお痛くないところで噛み続けることにより、関節にまつわる色々な組織に不快な症状が徐々に出てくるようになります。
それゆえ“習慣的によく噛む歯の位置”が“顎の関節の居心地のいい位置”を十分に考慮していることが快適に咀嚼ができる条件となります。
以上の3つの条件が満たされていないと決して“良い噛み合わせ”であると言うことができないのです。
噛み合わせって本当に大切なんです。そして噛み合わせをきちっとチェックして管理していくことが専門医としての歯科医に課せられた重要な仕事となるのです。
少し難しい話になってしまいましたが、ご理解いただければ幸いです。
