根管治療
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根管治療(歯内療法)が
成功しにくいわけ

ー重大な2つの理由から徹底解説ー

院長・関端 徹 / せきはた とおる

根管治療(歯内療法)はとても難しく、成功しにくい分野です。それにはこれまでの治療法や根管部分の特徴が関係してきており、さまざまな要因があります。ここでは根管治療の難しさや、成功しにくいといわれる原因を解説します。

これまでの根管治療は成功していなかった?

そもそも根管治療自体が、以下の理由で大変に難しいものです。
まず、口の中は舌や頬(ほほ)粘膜が存在し歯を診るには非常に邪魔になります。そして一方向からしか見ることができないため(のどの方からは見られません)視野が狭く、奥へ行くほど暗くなります。
そして、口腔内には唾液が常に出てきています。特に口の中に何かを突っ込むと途端にドバーと出てくるのです。このような口腔内は“テーブルの上”と比べれば、治療環境がよいとはとてもいえません。
また、歯そのものが小さく、さらにその中にある歯髄(神経)はもっと見にくくなります。

歯の内部は狭くてとても複雑

歯髄(神経)の入っている歯髄腔(しずいくう)は髄室(ずいしつ)根管の2つに分けられます。髄室は歯の頭の部分(歯冠部)にあり、根管は歯肉の中にある根っこ(歯根)の部分にあります。

歯の断面図

髄室から根管孔という根管に通じる入り口があり、そこから約12㎜の長さに渡るトンネルが続き、やっとその先に歯髄(神経)の歯への出入口である根尖孔があります。大部分根は大なり小なり曲がりくねっているのが普通なのです。車で例えれば《狭くてカーブが多く相当走りにくい道(車で首都高を走るイメージです)》なのです。

このような状況にありますから、歯冠部から根尖孔まで治療器具を入れて到達させるには、相当高度な技術と時間が必要となります。

これまでの治療機器と最新の治療機器

これまで根管治療(歯内療法)の結果や予後を診るのに「デンタルエックス線」を使っていましたが、ここ最近平面的にしか見ることができなかったデンタルエックス線より進化した「CBCT(Cone-Beam Computed Tomographyコーンビーム断層撮影法)」が普及してきました。
※CBCTは歯科用のCTとお考えください。

CBCTは右側の4枚。それぞれの右上に顔の像があるが、画像はこの顔の向きから写した様子をあらわしている。

CBCT は3次元的に細かく診ることができるため、新たな事実が発覚したのです。それは、今までの根管治療は、思ったほど成功していなかったということです。

今までのデンタルエックス線は2次元的にしか見えないので、前後的に像が重なっていて陰影(透過像)ができにくくなるため、病巣が小さくなったり、消えたりしたように見え“問題なし”と解釈されていたところが、CBCTを使って別の角度で見てみると、未だ治療がされていない根管の部分や、新たな陰影(透過像)を発見できることがあります。陰影(透過像)があれば、そこに病変が存在すると考えてほぼ間違いありません。

このような状況では治療後症状がなくなったとしても、5年、10年と経過した後に症状が出てくる症例も少なくないとされています。つまり、これまでの治療は完全に成功とはいえなくなってしまったということになります。

言い換えればCBCTを使うことによって根管の数や形態などの細かい情報を知ることができるので、根管治療を行っていくうえで治療成績が向上していくというメリットもあるということも言えます。

本題。根管治療はなぜ成功しにくい?

根管治療(歯内療法)の成功をさまたげる原因は大きく分けて

  1. 根管の清掃および洗浄、消毒の難しさ
  2. 根管充填剤(こんかんじゅうてんざい)による根尖部の封鎖の難しさ

の二つに分けられます。順番にご紹介していきましょう。

1.根管の清掃および洗浄、消毒の難しさ

1-1.<清掃および洗浄の難しさ>

根管内は細長く湾曲した空間。さらに、細かい枝分かれや極端に狭い部分も有している。

歯を取り出して拡大鏡を使いながら慎重に治療できるならともかく、治療するのは暗く狭い口の中です。さらに唾液や舌があるなど、治療環境は決してよくありません。もっといえば、根管は細く長く、湾曲しているうえに、側枝、イスマス(峡部)、フィン(ひれ状の部分)、根尖分岐(根先端部の枝分かれ)などの複雑な形態を有している部分も多く、根管の径も経年変化等によってより細くなっていきます。

電子顕微鏡で歯髄側から見た象牙細管(無数の穴が細管の入り口)

特に細菌に感染してしまった根管(感染根管)の症例においては、歯髄腔内だけでなく、その周りの象牙質の象牙細管内にも細菌が存在する可能性が明らかになっています。

当院の治療の様子。歯科用実体顕微鏡(マイクロスコープ)を使用中

そのような複雑な形態であるにもかかわらず、根管の入口から根尖孔まで約12ミリほどの長さがある根管の根尖部を、「ファイル」という根幹治療専用の道具で穿通(ファイルが根尖孔に到達した状態)させ、根管の長さを測定し、根管の中の壊死した組織や内壁をきれいにする目的で清掃および洗浄や消毒をしなければなりません。これは大変に難しい作業です。この作業をうまく成功させるには、術者の技術と根気、さらに術者の視線と一致した照明が備わっている高倍率の歯科用実態顕微鏡の使用や切れ味の良い切削道具、そして根管内部の汚れを外部に排出する洗浄システムの使用が必要不可欠です。

そして根管治療は奥の歯に行けば行くほど治療が難しくなります。なぜなら、小臼歯は1根管窩2根管が多いのですが、大臼歯は3根管4根管と根管数が多くなり、湾曲度も大きくなります。ちなみに~取れなくなります。

根管はこのように長く細い形態をしていますので、汚れを外部に排出させる洗浄方法も難があります。一般的には薬剤(次亜塩素酸ナトリウムやEDTA溶液など)をシリンジに入れて洗浄する化学的除去が基本ですが、最近ではPUI(passive ultrasonic irrigation)といわれる超音波発振装置に洗浄用チップを装着し,3%次亜塩素酸ナトリウムを使用しながら根管洗浄の方法が清掃効果を向上することが示されています。

大臼歯を上から見た断面図。4つの根管(緑色部分)がある。

ちなみに、上図は上顎第一大臼歯の根管の状況を示した図ですが、BMとは頬側近心根、BMLは頬側近心舌側根、BDは頬側遠心根、Lは舌側根の略語です。数えると4つの根管があるということです。

そして奥へ行くほど患者さんの開口量も少なくなりますので、暗く、直接見にくく、ファイルを操作するストロークも十分に取れなくなります。

1-2.<消毒の難しさ>

残念ながら現在までのところ、根尖部根管を安全、確実、完全に洗浄できる方法はありません。たとえば薬剤による消毒は、有機物が存在すると消毒効果が減弱することや、バイオフィルムを形成した細菌集落に対しての効果が少ないこと、消毒力が持続しないこと、根管内から短時間で消失してしまうということなどが挙げられ、効果は薄いと考えられています。

今のところ根管の消毒には次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ヒポクロリット)による洗浄水酸化カルシウムの貼薬が最も効果的と言われています。その他の消毒法として歯科用YAGレーザーの、パルスレーザー照射時に生じるレーザー誘発気泡(蒸気泡とキャビテーション気泡)の形成とその崩壊時に起こる圧力波によって生じる撹拌作用を応用した洗浄消毒の方法も研究されています。

2.根管充填剤による根管封鎖の難しさ

根管内の細菌を全て殺菌したあと、根管充填をおこなうことは根管療法の大原則ですが、完璧に根管充填することは難しいと考えられます。以下の2つがその理由として挙げられるでしょう。

  1. 根管貼薬剤の水酸化カルシウム、クロルヘキシジン、3-MIXなどには、耐性菌の出現の可能性があること
  2. 根管充填剤として一般的に多用されているガッターパーチャというゴムに近い材料は根管壁と接着しないうえに、時間の経過とともに収縮がおきたり、吸収されたりしてしまうこと。また、ガッターパーチャと併用されることの多いシーラー(ガッターパーチャだけでは埋まらない隙間を埋める目的の糊剤)も長期間経過すると吸収される傾向があること。

また、除去することができない細菌に対しては、長期間にわたって生体内で安定な材料を使い確実に根管系を封鎖して、細菌の埋葬(埋入)を計ることが最善の治療と考えられています。

1960年代初頭にアメリカで開発された歯内療法用材料。強アルカリ(pH:12.5)のため殺菌効果が期待できる。 水硬性であり、硬化する際に膨張するので隙間無く緊密に埋めることができ、漏洩による炎症を引き起こすことなく外来刺激を遮断。乾燥すると中性となるためため害作用がなく、しかも生体親和性が高いので身体に安心安全な材料。

この材料として今のところMTA剤(Mineral Trioxide Aggregate)による根管閉鎖(根管充填)が①生体親和性が良い、②封鎖性が良い、③殺菌力が持続するという理由で有望視されています。ただしこの材料の取り扱いは難しいので、術者の熟練を要するところです。

以上のような理由で根管治療は成功しにくいのですが、歯科用実態顕微鏡の使用、解剖学的な知識の応用、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ヒポクロリット)や歯科用YAGレーザーを使った洗浄、根充剤にMTAを使うということで、成功率は格段に高まってきますので、根管治療に悩まれている方は、根管治療を専門とする歯科医院で一度ご相談するとよいと思われます。

まとめ

根管治療は主に
(1)根管の清掃および洗浄、消毒の難しさ
(2)根管充填剤による根尖部の封鎖の難しさ
という二つの難しさから成功しにくいといわれています。

しかし、根管治療に用いる治療道具や治療材料は年を追うごとに格段の進歩をとげてきていますので、こうした治療は、きちんと最新の研修を積んだ歯内療法専門医に依頼することで、よりスムーズに成功に導いてもらえることがあります。
根管治療に関心のある方はぜひ一度、歯内療法専門医に相談してみてください。

ちょっと解説【根幹治療専用道具<ファイル>】

刃の長さは全て16mm。特殊なものとして、8号は灰色、10号は紫色がある。リーマー・ファイルには、21mm、25mm、28mm、31mmの長さの種類がある。 リーマー・ファイルはグリップの上面に以下のような記号がある。 リーマーは△、Kファイルは□、Hファイルは○

根管治療には根管内を掃除する道具が必要ですが、その代表がファイル(やすり状器)です。ISOのKファイルだと先端径が0.6mmの#06から1.40mmの#140のサイズがあります。
当院では未治療の根管を探査する際に、#08のKファイルから始めます。このファイルによって根管の形状、長さを知り、そこから1段階ずつ径を大きくして根管壁を清掃拡大していきます。#8は0.8mmですから、根管はいかに狭いところかおわかりでしょう。拡大サイズを#30としたら、そこまでには#1.0、#1.5、#2.0、#2.5と4回のファイル交換をしなければなりませんが、相対的に診ると、#30までのファイリングは比較的少ないサイズといえます。

#30のサイズのニッケルチタンファイルはサイズが小さいため移動が少なく、湾曲がそのまま維持されて形成されています。確かに根管充填をしてデンタルエックス線を映してみると見栄えはよく、根充剤のオーバーフィリングも避けられやすいのですが、細菌の除去という面では、根管壁にインスツルメントが接触できない領域が存在することが報告されています。
根尖部根管に洗浄液が到達し、洗浄液が十分に接触するためには#40のサイズまでの拡大が必要と思われます。

非常に柔軟で曲がりやすいファイル。 水平・垂直どちらの方向にも根管本来の形状に順応し、根管の形状を保ちつつ根管形成が行える。当院では今まで難しかった楕円根管・樋状根管に使用。 なおファイルは1歯に対し1回限りの使用として感染防止を徹底している。

ともかく臼歯部はの根管は狭い、細い、直接診えないという状況ですので、手探りで行う治療が定番でしたが、近年、切れ味がよく捜査中に折れにくいニッケルチタンファイルと、専用の根管拡大装置が登場してきました。これらの道具の出現により、根管治療もだいぶ楽になりましたが、切削にニッケルチタンファイルなどの回転切削器具を用いると円形にしか切削されないため、楕円形が多い根管では周辺部で接触されない面が出てきます。そのためSAF SYSTEM という根管切削器具も新たに開発されています。

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